AIを使った自動売買を開発していると、
避けて通れないのが 「どのAIモデルを使うべきか?」 という問題です。
実はこの問いに “正解” はありません。
相場の状況、特徴量、学習期間、ロジックとの相性……
それらが複雑に絡み合うため、
「万能モデル」は存在しない のです。
この記事では、ミチビキ開発の途中で実際に試した
- LightGBM
- XGBoost
- LSTM
- Temporal Fusion Transformer(TFT)
それぞれの特徴と、採用した/採用しなかった理由を
“開発ログ”として紹介します。
LightGBM:最初に“武器”になった高速モデル
AIモデル選定の第一歩は LightGBM でした。
理由はシンプルで、
- とにかく学習が速い
- 精度と計算速度のバランスが良い
- 特徴量を増やしても安定しやすい
- 分類タスクと相性がいい
実際、ローソク足の特徴量、ボラティリティ、時間帯など
比較的シンプルな特徴量の組み合わせでも
一定の精度が出るため、最初のAIとしては申し分ありませんでした。
ただし、使い続ける中でわかったのは、
✔ 相場が“急変”したときの対応力が弱い
✔ 時系列の依存関係を深く捉えるのは苦手
という限界。
「今の相場」と「一週間後の相場」では性質が変わることもあり、
そのギャップが出やすいモデルでした。
XGBoost:精度は一歩上だが“重たさ”がネック
次に試したのが XGBoost。
LightGBMに比べて、
- 学習が重いかわりに表現力が高い
- 多少複雑な相場パターンに強い
- 外れ値に強く、安定性が高い
というメリットがあり、
バックテスト上ではLightGBMより良い場面も多くありました。
しかし、深く使ってみて気づいたのは、
✔ 学習やチューニングに時間がかかる
✔ Walk-Forward再学習の頻度が多いと負荷が高い
✔ 特徴量が増えるほど過剰最適化しやすい
という実用面の問題。
自動売買では「毎週の再学習」が前提になるため、
“重たいモデル”は使い続けるほど負担になる という現実がありました。
LSTM:時系列特化モデルの強みと難しさ
次に挑戦したのが LSTM(Long Short-Term Memory)。
これはいわゆる“時系列AI”で、
チャートの流れやリズムを捉えるのが非常に得意です。
- 上下の方向性
- ボラティリティ変化
- ローソク足の連続パターン
- トレンドの持続性
こうした情報を「流れとして」学習できるため、
理論的にはFX向きのAIとも言えます。
しかし、実際に使ってみると、
✔ データ前処理が複雑
✔ 学習に時間がかかる
✔ 最適化が難しく、ぶれやすい
✔ 特徴量の追加で挙動が不安定になる
こうした問題が積み重なり、
安定した運用には工夫が必要でした。
特にバックテストと実運用の差が大きくなるケースも多く、
「強いときは強いが弱いときは急に負ける」という傾向がありました。
TFT(Temporal Fusion Transformer):次世代の時系列モデル
最新のAI技術として試したのが TFT(Temporal Fusion Transformer)。
特徴は、
- 複雑な時系列パターンに強い
- “どの特徴が重要だったか”も説明できる
- 長期依存関係も短期依存関係も扱える
という、従来モデルの弱点を克服したような構造です。
ただし、実際に使ってみると…
✔ 訓練時間が非常に長い
✔ 最適化に専門知識が必要
✔ データ前処理が煩雑
✔ 定期再学習との相性が難しい
といった“実戦でのハードル”が極めて高いことが分かりました。
TFTは「強力だが育てるのが難しいモデル」というのが正直な感想です。
モデル選びで見えてきた結論:「相場は1つのAIでは捉えきれない」
ここまで複数モデルを試して確信したのは、
✔ 相場の動きは、単一モデルで説明しきれない
✔ 相場には複数の“性質”がある
という事実です。
たとえば…
- トレンドの時期 → 時系列モデルが強い
- レンジ期間 → 木構造モデルが安定
- 急騰時 → ボラティリティ重視ロジックが強い
- 低ボラ時 → ノートレが最適解になることも
どんなAIにも“得意な相場”と“苦手な相場”が存在します。
だからこそ、ミチビキ開発では
- モデルの定期再学習(Walk-Forward)
- KPI(勝率・DD・月次利益率)の可視化
- 特徴量分析(SHAP・FI)
- 悪い相場を避けるフィルタ設計
といった “モデルを育てる仕組み” が重要になっています。
まとめ:強いAIを作るのではなく「適応し続けるAI」を育てる
AIモデル選びを通してわかった結論は、非常にシンプルです。
✔ どのモデルも万能ではない
✔ 相場の性質に合わせて“適応”が必要
✔ 定期的な再学習がもっとも重要な要素
✔ AIは「運用の仕組み」とセットでないと力を発揮しない
AIは“魔法のロジック”ではなく、
相場の変化に合わせて“育て続ける存在”です。
そのために必要なのが、
- Walk-Forward再学習
- KPIによる状態確認
- 特徴量の監視
- フィルタリング
- バックテストデータの継続的更新
といった 環境づくり です。
モデル選びはその一部でしかありません。
次回は「なぜ多くの自動売買は失敗するのか?」
次の記事では、AIに限らず多くのEAが“負ける理由”を深掘りします。
- バックテストの罠
- 相場変化への無対応
- リスク管理の弱さ
- パラメータ最適化の問題
- そもそも構造的に勝てないロジック
こうした“自動売買の失敗ポイント”を徹底解析します。
コメント